島先京一准教授・金澤徹教授からのアドバイス

 
2012年12月20日(木)メディアデザイン合同研究室にて、島先京一准教授と金澤徹教授に「作品における外国語」について広報委員の橋本が、「スペルミス撲滅キャンペーン」の一環として取材を行いました。
島先京一教授は本大学で英語科目を受け持っておられ、金澤徹教授は学生時代をアメリカで過ごされた方です。
以下、綴り=スペル=スペリング、綴り間違え=スペルミスとします。


1. 言語の文化的な違い

 
金澤
辞書にある言葉を見て、日本語とイコールにならない事も多いのに、イコールを求めがちですね。意味合いがわかっていくと、違う言葉を当てはめたり出来ます。

島先
究極なことを言うと、日本語を英語に訳すことは絶対にできないし、逆もできないんです。でも、英語でしか伝えられないこともあるし、日本語でしか伝えられないこともあります。
4年ほど前、日本で国際会議があって、僕はまず英語で論文を送ったんです。当日用に自分で自分の論文を日本語に翻訳したんですね。その時にびっくりしたのが、自分で書いたのに翻訳調の日本語にしかならなかったんです。それくらい言葉の世界で頭のOSが違うんです。

金澤
英語でしか伝えられないタイトルは恐らく、英語で考えてないと出て来ません。日本人にはない感覚ですから。逆も同じです。訳しようがなかったり、説明するか近い言葉を持ってくるよりないです。言葉には全部意味がある。それを大切にすれば皆さん辞書もちゃんと引くのではないでしょうか。
今回訴えたいことはそれじゃないですか?ちゃんと相談できる先生も近くにいらっしゃるんですし…。

── 英語を英語として頭から出せる人とそうでない人はどう違うんでしょう?

金澤
英語を英語で勉強している人たちは、頭の中に結構例文が入っていて、そこから出てくるんだと思います。日本語から訳していると辞書に頼ることになりますよ。

── その辞書を引いて英語を使う人たちがスペルミスをするのはおかしいのでは…。

金澤
辞書をよく見て書かないといけないだろうし、要は推敲でしょう。実は今回の「GraduAction」は、卒業制作展に関しての広報委員会で、スペルミスが造語として面白いのではないかと言う話から発展しましたね。瓢箪から駒の世界ですけれど。打ち間違えから始まって、それを色んな人が見て確認していくという作業をしています。

島先
また、辞書は最大のパートナーなんだけど、辞書には本当の事も書いてない事も事実です。辞書に載っていない訳語の方が当たりが多いです。

金澤
逆にネイティヴにはない発想で英語を考えられたりもするんですね。翻訳を仕事にするアメリカの友人が言ってくれたのは、アサヒビールのスーパードライが発売された時に使った「live beer(生ビール)」は凄いコピーライティングだと。ネイティヴからはこの発想は出てこない、「draft」しか思いつかないって。だからネイティヴが使う英語でなければいけないのではなく、言葉を使いこなさなければいけないと思います。ネイティヴでないからこそ出て来て、ネイティヴはまず使わないんだけれども許される表現。もちろん完璧に出来たらいいんですけれど。日本語ネイティヴが外国語として英語を使う時の独特な表現や思いつきってあると思います。

── 辞書引いて言葉を変換しただけでは実際に使われる様な言葉ではない事が多いですね。

金澤
パッと日本語を英語に変換出来ると思っている人多いかもしれませんね。でも日本語でも悩むものは、外国語でも悩みます。イコールの言葉はなかなか無いですし…。「林檎=apple」は分かりますが、特に抽象的な事を表現するのは難しいです。

── 他言語がわかると、日本語では中々表現できないことが、スッと別の言葉で出てきたりしますね。

金澤
外国語を勉強するというのは、違うものの見方を知るには凄く大切なことだと思います。

島先
ベタな例で言うと、日本語は魚の種類については細かい言い分けがあるのに、牛肉の部位については細かく言い分けがありません。日本の食文化では様ざまな魚が食べられているので、魚の言い分けが細かくなっているんですね。言葉が文化を映すものだとするなら、当然文化が異なると言葉も異なるんですね。そういう意味で言うと、作品のタイトルが英語にならざる得ない場合もあると思います。日本の中で英語的な発想で行われている事に着想を得ているならば当然なことです。ただ、注意して欲しいのは、元々は英語なんでしょうけどカタカナで日本語化して元の言葉から意味が遠くなってしまった事例は少なくないので、鵜呑みにして欲しくありませんね。

── 「テンション」とかですね。

島先
そう、今だと「やる気」みたいなイメージになってますが元は「緊張感」「引っ張りの元」ですね。僕の専門で言うと、「デザイン」と「design」、「アート」と「art」は相当示す範囲が違ってます。日本語は無理矢理に音を音節化する能力を持っているので、外国語を日本語にして取り込む事が出来てしまうんです。本当に意味したい事に合う言葉を探すべきです。

金澤
「トランプ」とかもそうですね。そういう場合は英語で「trump(切り札)」ではなく、日本語で「トランプ」と書かなくてはいけないでしょうね。

── 外来語をアルファベットが格好良いからとまたアルファベット表記をしてしまうと元の意味とは全く意味の違うものになってしまいますね。

島先
極端な話、暴走族が漢字を無茶苦茶に使うのと同じかもしれませんね。もしも「夜露死苦」などのような漢字を当てるのが格好悪いと言う感覚ならば、同じくらい格好悪いと言う認識がいいかもしれません。もちろん、それが格好良いと思うんだったらそれでいいと思います。

 2. 文法とスペル →


目次
>1. 言語の文化的な違い
 2. 文法とスペル
 3. 外国語を使うメリット


取材:メディアデザイン領域 グラフィックデザインコース 3年 橋本純